ソフトウエア開発委託契約の要件定義をわかりやすく解説します

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ソフトウエア・システム開発 要件定義の重要性

ソフトウエア・システム開発において最重要ともいえる要件定義ですが、その内容をもれなく定めることはかなり難しいと言えます。

ソフトウエア・システム開発においての紛争は要件定義書を適正に作成せず、それを適正な契約書と共にソフトウエア・システム開発上で運用しなかったために生じているといっても過言ではないと言えます。

ですので、ソフトウエア・システム開発の最重要工程である要件定義の定め方等について概要を見ていきたいと思います。

ソフトウエア・システム開発 要件定義の内容

ソフトウエア・システム開発における要件定義では①業務要件②機能要件③非機能要件、を定めます。

以下、それぞれのポイントや作成上の注意点を概観していきたいと思います。

①業務要件

①業務要件では、対象業務の全体像、流れ、処理手順等を定義していきます。

まずは当該業務全体の処理を把握し、次に当該業務のどの部分を効率化するかを検討します。

この工程で重要なのは、どの部分をソフトウエア・システムによる効率化を目指すか、にあると言えます。

全てをソフトウエア・システムで効率化するのではなく、当該ソフトウエア・システム開発の目的の範囲で必要な部分を抽出することが重要と言えます。

②機能要件

②機能要件では、当該ソフトウエア・システムが持つ具体的な機能を定義することになります。

これは、どのような情報が入力されればどのような演算を行いどのような情報を出力するかという、ソフトウエア・システムの核となる部分と言えます。

この機能要件でのベンダとユーザのずれが、直接紛争の元となり得ますので、要件定義でも最も大切な要件と言えます。

③非機能要件

③非機能要件とは、当該ソフトウエア・システムが持つ機能以外の性能面を定める要件です。

演算された情報の出力に掛かる時間や、操作方法等を定めるものです。

この要件も、実際に開発されたソフトウエア・システムを運用する段階で、当初想定した操作方法、出力時間と違う場合には、業務で使用出来ないソフトウエア・システムとして開発資金が無駄となり得ますので、十分に検討が必要となります。

ソフトウエア・システム開発 要件定義作成での協力義務

ソフトウエア・システム開発においての要件定義作成において、何よりも大切なことは「ベンダとユーザの協力」です。

当該ソフトウエア・システムが持つ機能や目的は開発依頼者であるユーザでないと定義できず、この点では要件定義の作成はユーザ側を主としていると言えます。

ですが、当該ソフトウエア・システム開発の目的に沿うソフトウエア・システムを開発するのはベンダですので、開発目的との合目的性、合理性、妥当性、網羅性、正確性等、ベンダの知識、経験を総動員してユーザを補助し情報を提供し、ユーザを導く義務があると言えます。

実際に、判例においても「東京地方裁判所平成16年3月10日判決」においてソフトウエア・システム開発はユーザとベンダの共同作業であり、上記義務の存在を認めています。

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